今ユーゴスラビアから来訪している、 Milojko Spajić ミロイコ・スパイッチ。彼の国は「モンテネグロ」だと日本のメディアは言っています。彼らはそれに何かの違和感のようなものは感じないのでしょうかねぇ。単なる無知なのか、単に鈍感なだけなのか。ドン・トランプに見るように無知と鈍感はしばしば同居します。それはそれとしても、スパイッチ?ちょっと違和感のあるラスト・ネイムですが、そこにはとらわれずに、我々は何を学べるのか、学ぶべきなのかを考える機会にしましょう。結論を先に言うと、小さな国の悲哀に溢れています。

まず、私のような老人にはこの「国」はむかしは「ユーゴスラビア」と呼ばれた国の一部です。Yugoslavia?一体それは何語でしょうか?まあ、あまり細かい事にはこだわらずに先へ進むことにしましょう。私の記憶ではyugo-とはどこかの国の言葉で「南」を意味するのだとか。まあ、バルカンにある小さな国々のひとつ。調べるとそれはVenet(ベネチア語)なのだそう。道理で分かりやすいですね。彼の国は今はMonenegroと呼ばれるようです。当然これはexonymでしょう。(exonymとは「日本」をJapanと呼ぶようなことです。)demonymは Crna Gora だそうです。ChatGTPによるとその意味もblack mountainだそう。つまり、ヨーロッパには珍しく、「濃い森」の地方、国という意味になるのでしょう。地理的にはアドリア海の東側にある国のようです。MontenegroをadjectivizeするとMontenegrin になりますが、これはラテン語の語尾変化のひとつのタイプですね。我々に馴染みのあるもので言えば、-ine で形容詞を作るようなものです。つまりMontenegro/Montenegrinそのものが相当にラテン語の影響を受けている、ということになります。モンテネグロの今の首都の名前はポドゴリーツァPodgoricaですが、昔はTitogradという名前でした。歴史的には中世からずっとPodgoricaでしたが、戦後共産党独裁が始まり、Titoという名前の人物がトップとなり、彼の名前を冠した都市名にrenameされました。そして、独立したCrna Goraは首都をPodgoricaに戻した、という歴史です。

このエリアは地理的に細かく分裂していてわかりにくです。ですが、それ以上に、歴史的、文化的にも分断されてきました。影響は、対岸のローマ帝国、次いでByzantine、Venetian、Ottoman、Slavic...という具合です。おそらくSerbiaの文化圏として認識して大きな間違いはなさそうです。地理、歴史、言語、宗教で分断され、分化し、異なる支配を受け、大国から忘れ去られて・・・という歴史です。ソ連という抑えが崩壊してからこの地域も分裂し、抗争し、不安定化しました。私にはそれを語る資格はありません。旧ユーゴ内では、NATOの空爆もありました。そして今日の平和があります。

このような小国の人々は、大体数カ国語を話すのが普通です。多くの場合、別にうまくはないと思います。ただ、相手に合わせて器用に多くの言語を操ります。「モンテネグロ」首相のミロイコ・スパイッチもwikiを見ると数カ国語を話すようで、そのうちの日本語は相当得意なはず。彼の名前は英語圏のMichaelあるいはMilesと似ているかをChattieに尋ねるとNOとのことです。現地の言葉でlittle boyを意味する言葉だそうです。

さて彼の話す言語、今日は英語を取り上げてみます:

Montenegro’s Path to Economic & Social Transformation | H.E. Milojko Spajić

英語の方はなかなか流暢ですが、中身がありません。ここでは中身を論じるよりも、彼の英語に注目することになりますが、そうすると fair to googの評価でしょうか。しかし、言葉だけが一人歩きすることはありません。彼のように国民の上に立つ立場の人は、外国人をも想定において聴衆に対して、ヴィジョンなりを示す必要があります。中身も大事です。さもないとまるで心に記憶に残りません。(余計な話ですが、これを英語で Takeawaysと言いますよね。)

蛇足。exonymについて。日本/Japan以外で有名なexonymを挙げよ、ということであれば、それはオーストリアでしょう。Austria。国営の航空会社もそう名乗っています。ですが、自分の国をドイツ語(オーストリアの言語)で言うとそれはÖsterreichですね。意味はeast+countryです。日本人は、せめてMontenegroがexonymなのかdemonymなのかぐらいには気を遣う程度の知能は持ちたいですね。