アメリカの映画の一大ジャンルである法廷もの。その中に必ず出てくる制度が陪審制。Wikipediaを読んでも、あまり「わかった感」が出てきません。この内容を執筆した人はこれで本当に理解しているのでしょうか。自分が特別に理解の悪い人間のように思えます。まあ、私の場合は子供の頃からその傾向がありますけどね。最近、イングランドの歴史の日本語の本を読んでいて少しわかりましたので、ネタにします。
先ず、我々は当時(中世)の争いごととはどのようなものであったかを知る必要があります。例えば:
「誰それの住む土地の正しい所有者は自分である。誰それにはすぐに退去してもらいたい。」
「誰それは誰それと姦通(不倫)をした。罰せられるべきである」
「誰それは自分を侮辱した。」
「誰それは借金の返済を長期間遅らせている。投獄してもらいたい。」(近世まで借金の踏み倒しは投獄)
などなど。無数の争いごとがあったと思います。刑法、民法の区別も明確ではなかったようです。中世までのゲルマン民族の伝統では、裁判で決着させる際に、被告は奇跡を起こせば、無罪である、というような裁判が行われていました。たとえば、不倫の疑いをかけられた女性が、熱した鉄板の上をあるき、3日後に傷を見せて、きれいであれば無罪、やけどがあれば有罪、というようなことです。多少不正確なところがあるかも知れませんが、おおむねそのような裁判がなされていました。ちなみに、この種の裁判を、英語でtrial by ordealsと呼びます。
ordealとは、苦行、試練、などの意味です。trial by combat というのもあり、これは2者を戦わせて被告が勝てば無罪というようなタイプのtrialでした。(西部劇の決闘とは少し違いますが、基本的には同じものでしょうね。)先日取り上げた映画『大西部 Big Country』での1シーンでは、美術的な拳銃2丁を揃えて、「決闘」をします。このような行為はduelingと呼びます。duel、つまり決闘です。なお、西部劇でよく出てくる「決闘」の多くはただのgunfightingのことです。最も有名なのは"Gunflight at O.K. Corral"でしょうか。邦題は『OK牧場の決闘』です。ただの打ち合いgunflightとduelは違いますよ。trial by combat でなにかの事実が明らかになったのでしょうか。そんなことはまったくなかったと思います。現代の知識、価値観で千年も前の、しかもイングランドのことを感じようとしても少し無理があるでしょうね。
明日に続きます。
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