
その時に必須のものは、映画では、頭に載せるかわいい帽子です。これには名前が何通りかありますが、英語圏ではkippa/kippahで通っていますが、別にyarmulkeという、ポーランド語由来とされる別の語もあります。ということは、これは主に東欧系のユダヤ人(Ashkenazim)が使った言葉だろう、ということになります。ここに掲げる写真はネットから頂戴しました。白い色のは私は初めて見ましたが、これだと一見で識別できますのでこの写真を採用しました。女性は被りません。
Exodusを祝うとは言え、その頃から始まった習わしではなくて、中世の中東、ヨーロッパのあちこちで色々な形で始まって定着したようです。場所によっては、ユダヤ人であることを周囲のヨーロッパ人に知らしめるために、kippaの着用が強制されたということもありました。似たことはイスラム社会でも行われて、特定の色の被り物がユダヤ人に指定されていたこともあります。
学校の歴史で習う「ラテラノ公会議」は、何回も開催されました。キリスト教指導者層がローマの有力氏族Lateran一族の大聖堂に集まり、色々なことを決めましたが、その中にはユダヤ人に対する弾圧、圧迫、差別などに関する事項も含まれていました。ヨーロッパ各地では繰り返し、繰り返し、ユダヤ人に対する迫害が行われましたが、その根本的原因はラテラノ公会議であったと私は思います。つまり、色々な階層の人々があれこれ理由をつけてユダヤ人に復讐するお墨付きをこの会議の決議が与えたようなものです。例えば、王族、貴族はユダヤ人からお金を借りている人々が少なくなかったのですが、踏み倒したり、ユダヤ商人を投獄したり、処刑したり。あるいは町中のユダヤ人全員を皆殺しにしたケースも。この点で有名なのは第4回のラテラノで、そこではユダヤ人は黄色い帽子を被らせることを決議しました。これには英語だとJudenhutという名前があります。英語はドイツ語から輸入したことがすぐわかりますね。それはビスマルクが被ったヘルメットのような形をしていて、天っ辺が、槍のようなものではなくて、丸い棒で、全体が黄色でした。興味のある方は検索するとすぐに見ることができるでしょう。
kippaを着用する理由として、特に宗教施設(synagogue )内で着用させるのは、頭に載せることで、「信者の頭の上の存在を意識させる」(humility)ということがあるのだそうです。信じる、信じないはご自由に。歴史的事実とは別の後付けだろうが最低限の説得性はあるかもね、という程度に私は理解しております。また、ヒサシがない形のkippaがあるだけですので、これはいわゆる帽子ではないだろうと私は思います。なお、ついでに、野球帽のような構造のcapで、「ヒサシ」に相当する部分を指す言葉は、普通はvisorですが、billという名前もあります。なぜでしょうか?その理由はbillには"beak"という意味もあるから。ご参考ながら、帽子本体のドーム状の部分はcrownと呼ばれます。
visorなしですので実用のものではない、ということです。多なり少なり、宗教的な意味合いがあるということは言えそうです。一部の、orthodoxと呼ばれるユダヤ教宗派の人々は終日これを被っているそうです。なお、彼らはユダヤ教の中でも特別に位置づけされ、イスラエル国内において、兵役の義務がありません。これは現在、修正されつつあるようで、近い将来はorthodoxの兵士が登場するようです。なお、もしあなたがkippaを被った、黒い服のユダヤ人をNYCで見たければ、47丁目のDiamond Districtと呼ばれる宝石、貴金属商の多いエリアに行けば今でも見ることができます。