字幕なしの英語聴き取り応援団

英語の映画などの発話部分だけを編集、抽出して、繰り返し聞くという学習方法をおすすめするブログです。留学などの費用、時間をかけずに、実用的な英語力を涵養することができます。3か月以内に結果を出しましょう。既に210本以上の映画を紹介済み。

2022年05月

30日にBSテレ東22時の「The名門校」という番組を偶然見ました。初めて見ました。その回では鎌倉の栄光学園を取り上げていました。名門中の名門なのでしょうね。やはり一流の大学に数多く進学させる高校はやはり一流のやり方をしているのだろうと思います。英語ディベートのチームのことを話題の中心にしていて、学校のすごさはいまいち良く伝わらなかったと思います。私はディベートのことはまるでわかりませんが、あんなに早口で大声を出すことが必要なのかな、と感じました。制限時間の中で、語数を少し多く詰め込むよりも、少ない語数でより的確に、ということも私には大事な要素に思えます-----ただ、それは若さという美徳で帳消しにされることなのでしょうけど。私のような老人の中にも、高校生の時に吹いていたような熱い風が吹き抜けたような気がしました。時間に余裕のある方にお勧めの番組です。

さて、今日は、Economistという雑誌の記事を扱います。標題の記事は以下で読むことができます。(全文を読むためには登録しなければならないかも知れません。無料でできますので、まだの場合、やってみることをお勧めします。)その記事は以下のURLにあります。

Economistマガジンは、普通のマガジンです。名前で損をしている可能性があります。別に経済記事専門ではなく、色々なことを話題にします。イングランドの高級新聞はかなり敷居が高いと私は感じますが、Economistは比較的外国人にもわかりやすいと思いますし、言葉の選択も非常に的確だと思います。でも過度に大衆迎合型でもありません。そのバランスの取り方がよろしいと思います。

特に、この記事には、音声ファイルが埋め込まれています。チャキチャキのBEです。(そんな言葉の使い方があるかどうかしりませんが…)ですので、BEの聴き取りに重点を置くことを希望する方には正にうってつけのメディアだと思います。

https://www.economist.com/china/2022/04/30/why-some-chinese-are-angry-about-covid

あなたはもはや、「英文解釈」式の英語勉強法をしていないだろうと思います。このブログは聴き取りに集中するためのものですが、聴き取りがある程度できるようになると、例えば、真剣に集中して3,4箇月立つと、聴き取りができるのですが、今度は単語の力、句動詞の力、熟語の力が不足していることにあなたは気づくはず。そして、それは同時に、英語を英語のまま「読む」ことにもつながっていることを実感するはず。特にこの教材のように、文字と音声が同じもの(transcript)である場合には。ですので、ちゃんと聞き取ることは、実は英語を英語でちゃんと、直接に読むこと、にもつながっているのです。高校で行う「英文解釈」は、英語の力とは何の関係もありません。というか、あれ、モノをいうのは日本語の力ですよね。あんな勉強法は高校の漢文の授業と現代中国語の関係と同じです。何の助けにもなりません。このように、実は、私は、聴き取りだけに集中しましょう、と言っているのではなくて、これこそが、日本人に必要な英語の力の入り口なのです。その先には本当の英語の世界が広がっているのです。

今日のこのブログを閉じる前に、もう一度申し上げたく。ぜひこのEconomistの記事を読んでみて、あるいは聞いてみてください。

今日は英語はほとんど登場しません。有名なquoteには、原文と少し違う、あるいはかなり違うものが数多くあります。「予の辞書に不可能という言葉はない」という言葉、よく聞きますよね。この元の文(フランス語)は以下のものです:

Ce n'est pas possible, m'écrivez-vous: cela n'est pas français.
それは不可能です』と君は私に書いてよこした※。しかし、そんなことばはフランス語にはない)」
※その文は「現在形」で書かれているので、「書いてよこした」ではなく、「(いつも)書いてよこす」です。
出典 コトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E4%BA%88%E3%81%AE%E8%BE%9E%E6%9B%B8%E3%81%AB%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84-2236869

これは、ナポレオン・ボナパルトが書いたとされる手紙の一節にあります。でもフランス語の原文は、この日本語訳の「予の辞書に不可能という言葉はない」とかなり違いますよね。その意味は「それはフランス的ではない」あるいは「フランス語ではない」の方が、より妥当な気がします。つまり、私の理解では以下の訳になるはず:

それは可能ではありませんと貴殿は予に報告するが、それはフランス的ではない

フランス的ではない、の意味は、「フランス人のやることではない」ということです。これは、フランス統治下の、かつての部下で当時マクデブルク(ドイツ領)の知事(市長職)との手紙のやりとりの中にあります。

(なお「フランス的ではない」によく似た文で、こんなものがあります:
Ce qui n'est pas clair n'est pas français
これはアントワーヌ・リヴァロールという文筆家の言葉とされていますが、意味は「明快ではないものはフランス的ではない」です。)

そんなわけで、可能な限りは、巷間言われる言葉によるのではなく、原文でその意味を考えたいと、私は常々思っております。(ただ、巷間伝えられるものは、オリジナルよりも優れていることがある、とも、時々私は感じます。)次の、ナポレオンが書いたとされる、少し似たquoteがあります:

Impossible est un mot que l'on peut seulement trouver dans le dictionnaire des imbéciles.
impossibleとは、愚か者の辞書においてのみ見る言葉である

imbecileとは英語でもあります。「愚か者」という意味です。(フランス語と英語では発音はかなり違います。)おそらく、これと最初に引用した文とが混ぜ合わされて、「予の辞書に不可能という言葉はない」になったのでは?

仮にあなたの上司あるいは周りの人が「予の辞書に不可能という言葉はない」と言って、あなたが「それはナポレオンが言った言葉と少し違いますね」と言いたくなったら…?とても訂正する、あるいはコメントする勇気は私にはありません。ま、私がいつも友達をなくす言動と呼ぶことです。つまり、原典に遡りたいという希望は飽くまで自分用ですよね。一般の人よりもちょっとだけ教養のある人の態度としては、むやみに根拠の曖昧なことを再引用するよりは、原文に立ち返って見るゆとり、勇気があれば、それはより望ましいことである、ということです。これは難しいことです。でも、もしあなたの上司が、あるいは教授が、あなたのそのような控え目で、なおかつ教養を湛えた態度に気づく人であったとしましょう。それはあなたの静かな勝利となると私は信じる者です。これからも学びを続けましょう。

なお、予の辞書に不可能という言葉はない、この太字の部分を英語でそのままin my dictionaryとする英語版のquoteも私は何度も目にしたことがありますので、日本語だけのオリジナルというよりは、英語版の少し歪んだquoteが日本語に入って来たのだろうと私は推測しております。

(A)語句の解説の前に解題を。最初、私はこの映画のタイトル、主役の名前を知って(聞いて)、少しモヤモヤしたものを感じました。そのモヤモヤとは以下のことでした。
insomnia とは「不眠症」のことです。in+somnus に由来。in-は否定形、somnusとはsleepのことだそうです。dormerという名前は、古フランス語のdormeor由来だと考えられるそうです。dormeorとはsleeperを意味するのだとか。
https://www.etymonline.com/search?q=insomnia
https://www.surnamedb.com/Surname/Dormer

dormeorという言葉、どこかで見たような。そう、動物、植物がとる休眠状態のことをdormantと言いますね。その名詞形はdormancy。(SFの宇宙旅行での「冬眠」はhibernationです。)つまりこの、「眠る」というラテン語由来の言葉は他の「英語」の言葉にもなっている、ということですね。

なお、dormerという綴りそのものでは、屋根裏部屋の明かり窓のことを指します。外から見ると、屋根に窓がついているように見えますが、あれのことです。これは上記の、ラテン語の話とは別の系統に由来するのでしょう。映画のタイトルがsleeplessで、主役がsleeperという名前なのですね。ということはソダーバーグはおそらく最低限のラテン語の知識、姓の由来を知っているということなのでしょうね。

(B) 125 words/phrases
headline ここでの意味は内偵捜査での「手柄」
pit bull 犬種(闘犬?)
on loan 出向中で
herniation ヘルニア
intracerebral hemorrhage 脳内出血
contusion 挫傷
scrub ゴシゴシ洗う
prolong 長引かせる
mutilation 切断
tidy (vt) 片付ける
dive 安酒場
storm off 飛び出す
bolt 放り出す(ここでは)
admirer=fan ここでの意味はおそらく「ブランド品好き」だろう
Catch him off guard. 油断している時を狙え
frivolous つまらん
demeanor<demean ここでは「振る舞う」という意味のvt
all business 仕事一筋の
Halibut Calabrese/Olympia 魚の名前
halibut capital? オヒョウの聖地
buck-figured 牡鹿の形の
Warfield 姓(由来は「牧草地」。「戦場」ではない。)
rattle cage わざと怒らせる(idiom)
give a fuck 問題にする(普通は否定形で使われる)
shake down カモにする(カネを巻き上げる)
big fish 大物 (theが付くことに注意)
get at…credibility:get at 普通は「到着する」の意味。ここでは「嫌がらせをする」の意味。
house of cards 「トランプ」でできた家(比喩的、砂上の楼閣)
probation 保護観察
keep to sth 閉じこもる
misdemeanor 軽微な犯罪
People give themselves away same in misdemeanors as in murder cases. 人は微罪でも殺人と同じようにボロを出すものだ(おそらく逆の言い方をするつもりだったのでは?)
That makes me all soft inside. 泣けるセリフだな
occur to you そう思う
live on your own 一人暮らしをする (Youを省略)
keep fishing バカ言ってんじゃねえよ
fuck-the-world 世をバカにした
walk out on you お前を捨てる
try ひどい目に合わせる
you're about to dismiss みのがしそうな
Don't let I.A. cut your balls off. idiomだろうが意味不明。
fan out 散らばる
Man down ひとり倒れているぞ
You're on Eckhart's shooting. Eの件を担当してくれ
vastus externus 筋肉名
nads=balls
get a fix on 特定する
contempt 軽蔑
marrow 髄
A name or I'm gonna hang up. 名乗らないと切るぞ
Not missing much 威張るほどのことではないな。
grade school 小学校
I don't want to think about all that: all that??? 普通はall that jazzという。
You just about killed us 文法的にはYou just would have killed us.
You were out fucking your best friend's boyfriend: be out fucking セックスするために外出する
How're you holding up?=How are you?
throw gas on the fire 火に油を注ぐ(gas=gasoline)
are brought in feet first: feet first 死体となって(死体を運ぶ時足を先にするからだとか)
comfy <comfortable
lose it 限界だ 
hallucinate 幻覚を見る
babble 訳の分からないことを話す
sort it out 解決する
small stuff, right語句の意味は「小さな事でしょ」だが、本人は誇りにしたいはず。
You bet your ass=absolutely 
They'd have taken you. お前をしょっぴくべきだったんだ。
don't see the wood for the trees 木を見て森を見ない
Killing changes you. It's not guilt. 殺人はお前を変えるぞ。罪悪感が変えるのではない。
You'd see it right away じきに判るはずだよな
pathetic 哀れな
catch (you) with your pants down  ズボンを下げている時にお前をcatchする-->不意に襲撃する
about as mysterious as 同じ位ミステリアスな(この文は「お見通しだ」の意味)
take aim 狙いをつける
got something on me=have something on me 弱みをにぎる
I'll just roll over: roll over 寝返りをするだけだ-->抵抗しない
mess with sth 関係する
do the math 計算する
patsy カモ(鴨でなく)
make it stick (idiom) 仕立て上げる
at the (police) station
crack 事件を解決する
in one’s lap (idiom) 人に任せる
distraught 取り乱して
vulnerable 傷つきやすい
laugh one's ass off ~を馬鹿笑いする
scared shitless ひどく怯えて
He'll be in/first thing(朝)一番に顔を出す
(have) no way of doing する術がまったくない
In what regard were you
and her familiar? herではなくshe
avid 熱心な
hang around ぶらつく
hung<hang/hung/hung
hearsay うわさ、伝聞(法律用語)
hothead 短期な奴
have myself to blame for sth ~については自業自得の
vent 送風口
skirting board 幅木(高級なものから安物までたくさんある。日本のは安物。)
come forward 申し出る
Turn the place over. 引っ掻き回して探せ
screw around 浮気する
forthcoming 逮捕されそうな
plant 仕掛ける
a hold 留置命令書?
more of sth ~以上のもの
tainted 腐敗した
You don't get to pick when you tell the truth. 真実を話してもちょろまかしても良いことにはならんぞ。
shut-eye ひと眠り
White nights getting to you: get to you ~にこたえる(堪える)
Got that right. 主語Youが省略。「その通りだ」
shell casing 薬莢
Hold the fort 砦を維持せよ-->留守はまかせるよ
Umkumiut 地名
get up the nerve 勇気を出してやる
the end justifies the means目的は手段を正当化する
pack rat ゴミ男(直後に言い換え)
rambling さまよい癖の

このブログで扱う200本目の映画はこれになりました。上級者向けとして結構お勧め度高いです。

映画のタイトルの意味が「不眠症」。主役の名前がDormer、実はこれラテン語由来で「眠る人」を意味する言葉です。スティーブン・ソダーバーグの原作の映画化です。ソダーバーグは監督として知られていますよね。でもこの映画では原作者です。このタイトルと主役の名前については、明日の語句解説に詳しく書きます。

非常によくできたシナリオだと思います。大御所が出演する映画はたいてい最良のシナリオですよね。使われる言葉が典型的なmovie Englishです。つまり普通の人の身近にこんな言葉を使う人はいません。でも知っておくとTVドラマを見る時に役立つ熟語が多いと私は感じました。

★ ★ ★ ★ ★

映画: 『インソムニア』(原題:Insomnia )
公開:   2002

ジャンル:ドラマ、刑事もの

時間: 118 min

脚本:  Hillary Seitz

原作: Insomnia by Nikolaj Frobenius Erik Skjoldbjærg

監督: Christopher Nolan

出演: Al Pacino, Robin Williams, Hilary Swank

あらすじ:LAから来た刑事が田舎の殺人事件を扱う。刑事と犯人がわかりきっていますが、虚々実々の駆け引きがあります。

聞き所: Al Pacino, Robin Williamsがフェリーで会って話をするところ(trailerに登場)

訛り: なし

私の評価:
エンタメ度   つまらない★★★ 面白い
文化理解要求度 高い   ★☆☆ 低い  
熟語、俗語量  多い   ★★☆ 少ない
早口度     早い   ★☆☆ 普通
ビジネス用例  少ない  ☆☆☆ 多い 
------------------------------------------------------
合計           7★(満点15★)

台本総語数:8.5k 普通のものより1,2割少ない

スピード:   8.5/118/2=144 wpm   Al Pacinoの声がindistinctなので数字よりは速く感じるでしょう

難解語割合:125/8.5k=1.47%  多い

予告編:(この映画のMT(movie trailer)を見ることができます)


スクリプト:
https://www.springfieldspringfield.co.uk/movie_script.php?movie=insomnia-2002
trailer
コメント:
話されている英語は、犯罪物特有の、すれっからしのチンピラのような言葉です。文法的な「誤り」も、慣用からの逸脱も多い。でも、その誇張が、さも現実的に響きます。アメリカで生活しようとする場合、この種の言葉に慣れておくことは、私の考えでは、意味があります。アメリカはいわゆる階級社会ではありませんが、話す言葉が「階級」を表しています。相手の「階級」にある程度併せて単語、熟語を扱えることは、親近感につながります。

昨日の続きです。

今ハワイのパール・ハーバーには、退役した戦艦ミズーリ号がミュージーアムとなって係留されています。底の浅い海底からは薄く油が浮いてきて海面に虹色の干渉縞が波間に見えていました。おそらく真珠湾奇襲の際に沈んだ船体の一部からでしょう。ダウンタウン、ホノルルから路線バスで4,50分だったように記憶しております。この甲板上で1945年9月2日に東京湾にて日本の降伏文書の書名式が行われました。ミズーリ号が選ばれた理由は、日本側のテロを恐れて、という意見がある一方で、当時の大統領ハリー・トルーマンの出身州がミズーリ州であったため、という意見もあります。USS Missouriにはnicknameがあり、Mighty Mo と呼ばれます。Mo とはMissouriのことですが、同時に男性あるいは女性の愛称でもあります。Maurice、Monica などの短縮形。この、船では、代名詞は女性を使いますが、必ずしも女性代名詞とだけ縁があるとは限らず、例えば、空母ロナルド・レーガンは横須賀を母校としていますよね。つまり、男性の大統領の名前を付けられた船で、その船を指す代名詞にはsheを使う、というややこしいことになります。念のため申し上げますが、地名も女性代名詞です。たまにitを使う人もいます。少しややこしいので、そのココロもよくわかりますよね。

サスケハナ号が来日した時に掲げられた国旗には今より少ない数の星が縫い付けられていたのだとか。おそらく40前後でしょう。その時の国旗が、今ハワイのミズーリ号博物館の艦上に掲げられているのだとか。(旗は1年持つかどうかでしょうから、オリジナルの旗ではないでしょう。そのような図柄にして年に1,2度作り変えているはず。)私はミズーリ号博物館を一度だけ訪れたことがありますが、その国旗、星の数については何も記憶しておりません。もしそうだとしたら、それはなぜ?アメリカは海禁を国是とする日本の扉を開けるために、周到な外交準備を重ねて、来日しました。その前年には、ヨーロッパのどこかで、おそらくオランダでしょうが、アメリカは日本に使節を送り、捕鯨船薪炭、水食糧の取引、遭難の際の援助を求める、ということを通告しました。当然、日本を金づるのひとつにしていたオランダは徳川にその旨報告をしました。おそらく、アメリカ人政界、軍部指導層の意識の中には、江戸時代の連邦国家日本の惰眠を覚ます、そして昭和時代の専制君主国家日本を民主化するという使命感、自覚が背後にある、あったのではないでしょうか。その共通点が、ミズーリ号の旗、もしそれが本当にサスケハナ号のもののレプリカであるならば、ですが、それが共通点であるような気がします。なお、ペリーの艦隊には、通訳としてオランダ語を話す人が乗船していたそうです。つまり、オランダ語を両者のlingua francaとする準備をしていた、ということですね。

さて、ミズーリ上で、マカーサーが行った演説の音声ファイルがアーカイブされています。以下のURLにて誰でも無料で聞くことができます。

https://www.americanrhetoric.com/speeches/douglasmacarthurussmissourispeech.htm

カラー動画もあります。こちらには、音声はありません。


最初の6分は飛ばす方がよろしいでしょう。

マイクの前に立って演説をする人物の動画が少しだけ映っていますが、それがマカーサーです。当時60歳代半ばです。これ(音声ファイル)は、私の評価では、なかなか素晴らしいスピーチです。そのサイトにはtransciptも用意されておりますので、もしあなたも気に入ったのであれば、研究してみてはいかがでしょうか。この種の状況で使われる典型的な単語がいくつかあります。例えば、the victors and vanquished という言葉があります。勝者と敗者、でペアで使われる単語です。普通は the victors and the vanquished となるはずですが、定冠詞を一つにしています。これはこれでひとつの思想の現れでしょうね。 

ところで、占領軍のトップとして奉職したマカーサーは、朝鮮戦争でアメリカ軍と国連軍の指揮をとりました。この時に中国側領土からの後方支援に相当にいら立っていたそうです。このため中国側に入り込んだ場所、いわゆる満州地区に原爆を落とせ、そして中国側のサポートを断絶させる、という発言をします。それが大統領トルーマンに知られ、ただちに解雇されました。一部にはそれは表向きの理由であるという説が当時ありましたが、その説自体は、空軍のカーティス・ルメイ将軍(1945年3月の東京大空襲を指揮した人)が唱えていたものでした。真の理由については、色々挙げられていますが、私の説は、マカーサーは共和党から立つ、有力な次期大統領候補と見なされていたから、というものです。戦争中からマカーサーは、アメリカの新聞にしょっちゅう登場する有名人で、庶民に絶大な人気がありました。アメリカとイングランドはヨーロッパ戦線でドイツを徹底的に爆撃し続けました。その中でドイツは、たとえば、戦闘機(メッサーシュミット)の生産を、爆撃が集中した直後に工場を修復して、月間200機製造して、戦前からの記録を更新します。つまり、毎日何万人も爆撃で死ぬ間にもどんどん戦闘機製造能力を回復させていたのです。驚きですよね。ドイツ爆撃でのアメリカ空空軍の損耗率は16%だったのだとか。おそらくこれは人的資源の話でしょうから、パイロットの16%は死んだのですね。中には迎撃されてパラシュートで避難しながら、地上でドイツ民間人に撲殺された人もたくさんいたようです。決してアメリカの爆撃機は安全な条件(高度、迎撃体制の有無)からだけfirebombを投下していた訳ではないのですね。一般に、ボーイング社の大型爆撃機での損耗率は10%と言われていましたので、ドイツ方面ではそれよりはやや高めの損耗率だったということです。

アメリカはドイツの戦闘機製造能力を主に爆撃機でつぶそうとしていたのです。その目鼻が付いたのが1944年の末頃でした。この頃から、今度は太平洋戦線で、日本軍をフィリピンから放逐し、ものすごい勢いで北上し、沖縄、本州をめざして北上をしてゆきました。これは毎日アメリカ本土で発行される新聞の格好のネタでした。アメリカ人ですら驚くようなスピードで北上して日本に迫っていたのです。このため、フィリピン諸島では、島伝いに北上することはなく、数個の島を飛ばして、兵站線を確保しながら、最大の速度で北上していました。日本軍が駐留していた小さな島々では、アメリカ軍を待ち構えていたのですが、一度も戦火を交えることなく、終戦になった部隊もたくさんあったようです。一方で、アメリカ軍と日本軍が戦闘行為をした島では、日本軍は補給のないまま餓死に向かって突き進んでいきました。

かつてトルーマンは、マカーサーが欧州で指揮した第1次世界大戦中の部隊の一員でした。当然トルーマンはマカーサーのことを覚えていますが、逆は真ならず。マカーサーは常にstylishで派手好みな将軍だったことで有名でした。US Military Academy West Pointは日本語で 「陸軍士官学校」と訳されますが、「士官」ではなく、高級将校を養成するための機関です。マカーサーはここを首席で卒業しております。

今のロシアのクレムリンの人々の発言を見ると、特に核兵器の使用をめぐる発言を見ると、国家のリーダーとその側近というよりも、ほとんどチンピラの集まりのようです。というか、元々がチンピラであり、国家のダニあるいは寄生虫でした。フィンランドがNATO加盟を申請という話が出ると核爆弾搭載可能な爆撃機を国境近くで飛ばす、日本がG7に同調して制裁に加わると、アリューシャンで軍事演習を誇示する。ウクライナでの消耗している戦力(人的犠牲、物的消耗)の一方で、このようなリソースの無駄遣いをする… かつて、スターリンでさえ絶対的に避けていた複数の前線を持つことを現代のスラブ系のチンピラは気にしないのですね。肩で風を切って神戸の街を歩いていた、あるいはこれ見よがしに大型ベンツ車を乗り回し、わざと迷惑になるようにこれ見よがしに停めるという、山口組の人々とやることが極めてよく似ています。(昔は神戸・大阪地区の警察官は見るからにヤクザ風のクルマは駐車違反の対象にせずに、飛ばして堅気のクルマだけをあげていたそうですよ。)なお、核爆弾搭載可能という意味は、別に重量ではなく、パラシュートで投下して、爆発までに、何キロも投下地点から飛行して安全圏に逃避できる、ということに過ぎません。現代の核戦争では爆撃機で核兵器を落とすような悠長でリスキーなことは必要ではなく、ミサイルで目的地に飛ばすことになります。

今ウクライナでの戦闘がいつかは何らかの形で終わる時が来ます。ウクライナ側が勝利を収める場合、ゼレンスキーはやはり歴史に残るスピーチをするでしょうか。少し興味があります。

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