字幕なしの英語聴き取り応援団

英語の映画などの発話部分だけを編集、抽出して、繰り返し聞くという学習方法をおすすめするブログです。留学などの費用、時間をかけずに、実用的な英語力を涵養することができます。3か月以内に結果を出しましょう。既に210本以上の映画を紹介済み。

2020年06月

この映画の英語をおすすめします。しかしこれは少し難易度が高いかも知れません。今日はそんな話題です。最初にお断りを。私は一度もボストンに行ったことがありません。もしかすると、以下のコメントには、間違いがあるかも知れません。そのつもりで読んでくださいませ。

(1)背景
このタイトルは、ボストンを流れる、有名な川の名前です。そして冒頭の2つのシーンでは、子供が道路で遊ぶ背景に、色々な映画に登場する、あの同じ橋が見えます。調べるとこの橋がミスティック橋だそうです。アメリカ映画に登場する橋と言えば、ブルックリン橋(NYC)、ゴールデンゲートブリッジ(SF)が双璧でしょうか。おそらくそれに次ぐ登場頻度かも知れません。

ボストンが舞台の映画のお約束は、昔から、アイリッシュとイタリアンが対立する町・・・ということは、カトリックが多く、警官は汚職まみれ、レッドソックス(MLB)、ケルティクス(NBA)、ペイトリオッツ(NHL)などのプロスポーツの熱いファンが多い、というのが通り相場です。ですが、この映画は、汚職はまったく関係しない設定の刑事物、犯罪物です。
カタカナではわかりにくいですが、それはCelticsつまりケルト人、つまりアイリッシュのことですね。)

登場する家並みは19世紀半ばの木造が多く、どことなくサンフランシスコの中心部と似ています。木造3階建てのアパートメントのことをAEではtripple-deckerと言います。アメリカでこれがある町はそう多くはないような気がします。この映画のシーンではtripple-deckerが使われています。

主役の一人Jimmyは、groceryを営みながら、マフィアであることがわかります。欧米のマフィアは社会に紛れ込むために、誰がマフィアかは明確にはわかりません。(ロシアのウラディミール・プーティンがマフィアかどうかは、よくわかりませんが、挙動を見ると…)

この町にはBoston Univ、Berkeley(音楽系大学。University of California, Berkeleyとはまったく別)などの有名な大学がいくつもあります。River Charlesを挟んだ対岸のCambridgeという町には、Harvard、MITがあります。イングランドの有名な大学町と同じ名前ですね。映画の中ではCambridgeにあるthe Cantab Loungeという有名なバーの名前が登場します。Cantabは、コーラ缶のプルリングのことではありません。Cambridgeという名前はイングランドの大学町に由来しますが、CambridgeのLatinizationはCantabrigiaというそうで、その短縮形がCantabです。当然demonymもCantabでしょうね。この短縮のやり方がいかにもアメリカ風です。(同時にこのCantabという単語はHarvardの学生、卒業生のことも指すようです。)

ボストンは、ポール・ニューマン主演の古い映画『評決』The Verdictの舞台でもあります。アル中のボロボロ弁護士が戦うという映画。中にバーが登場しますが、バーの映像はボストンで撮られたのではなく、監督の好みでマンハッタンで撮影されたそうです。

(2)訛りと言葉
我々が出合うことはなさそうな、最下層のボストニアン達が登場します。私はボストン訛りについてはよくわかりませんが、アメリカの中では最も悪名高いアクセントです。ボストン訛りの例を尋ねると、「numbah fahかな」と教えてくれたアメリカ人がいました。なんのことかわかりますか?number fourの発音をボストン訛りで書くとnumbah fahになるのでしょうね。

この映画で、かなり大事なシーンがあります。刑事2人が911の電話録音テープを再生するところ。でのキーワードはherです。これをボストン訛りでhahと発音するので、少し面喰います。これはわざと現地の訛りを出しているのでしょう。

ただ、アメリカの訛りとは、日本語の、たとえば東北弁、大阪弁のように、しゃべりだした瞬間からわかるものはあまりなく、-er音のような、ポイント、ポイントでわかるものです。(例外は南部のdrawlingです。)ただ、私には、ボストンのnumbah fahとニューヨーカーのnumbah fahとの違いはわかりません。ま、どちらもアメリカの東北部の訛りというくくりに入れて良いと思います。

映画の途中で、話し方がとたんにかなり不明瞭な発音になり、速度も速くなります。制作者の意図なのか、あるいは別の理由があるのでしょうか。

私は同じ映画を2度見ることはあまりありません。ですが、この映画は2度見ました。slangが非常に多いため、話の流れをある程度つかむと、辞書にはないslangの意味の推測が可能になります。

最初から数分経ったシーンでは、橋の上から主人公の一人がneighborhoodを見下ろしていて、その意味は、二つに解釈可能ですが、どちらとも言えません。しかし、このシーンでのneighborhoodが「地区」「一帯」を意味する言葉だとわかります。おそらく最初のシーンの、路上で幼いころの主人公3人が遊んでいた場所はこのneighborehoodにある、ということを暗示しています。

あるいは、事件現場にpsychologist、心理学者を呼べ、というのがあります。slangで別の意味があるのかいろいろ調べましたがありませんでした。その直後のセリフでshrinkという言葉が出てきます。これはpsychologistを揶揄する言葉だそうです。暴走する頭デッカチを小さくするというところから来ているようです。でもなぜまだ死体の見つかっていない現場にpsychologistが?もしかすると今でいうprofilerのことでしょうか?この言葉profilerはそれほど古くなく、初出はおそらく1980年代または90年代のはずです。この映画の1970年代という時代設定です。

(3)人物
登場人物がそれぞれに心の中に暗いもの、あるいは暗い過去を持っています。そしてneighborhoodの住人達が不自然なほどに血縁の近い人々と結婚しています。地縁、血縁の濃い土地柄であることを描きたかったのでしょうか。

あるいはこの映画は細部で少し描き足りないのかも知れません。たとえば、Katieの恋人Brendanの父親が、ある日飲みに出て行ったきり、失踪しますが、10数年間、律義に毎月500ドルを送金し続けている、とBrendanが警察に語ります。家族が捜索願を出さなかったために捜査はなかったようです。殺されたと考えるのが自然ですが、Brendanはそれは父だと思い込んでいます。あるいは思いこんでいる振りをしています。(それ以上に、Brendanの母親が音信不通で500ドルの送金は「あの人らしい」と言うセリフもあります。)

私の経験からいうと、小説が映画化された場合、大体、映画より原作(小説)の方がはるかに面白いです。小説ではこの辺はしっかりと描かれていそうです。

いつもより長めのコメントでした。「教科書的」な映画ばかりではなく、ビーフジャーキー、バリバリに硬い煎餅のようなものもあなたの英語の勉強に良い刺激をもたらすかも知れません。Clint Eastwoodが監督する映画は、場所の設定が、特定の、しかもイメージしやすい場所に限定しているような気がします。以前取り上げた、Gran Torinoはデトロイトでした。あまりに有名な町であり、急速に衰退したことでも有名です。このように土地に深くかかわる映画作りが彼の特徴かも知れません。彼の他の作品も良いのかもという期待が膨らんできました。

2,3か月前に、BS12の土曜洋画で放送されました。それまでまったく知らない作品でしたが、私にとっては忘れることのない、傑作の一つとなりました。おすすめです。

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映画:『ミスティック・リバー』(原題 Mystic River)

公開:2003年

ジャンル:犯罪ドラマ

時間:138分

脚本:  Brian Helgeland

原作: Mystic River by Dennis Lehane

監督: Clint Eastwood

配役:
Sean Penn as Jimmy
Tim Robins as Dave (famous for The Shawshank Redemption)
あまり有名な俳優は出ません。SeanはたしかMadonnaの昔の旦那だった人でしょう。

あらすじ:
ボストンの旧市街。3人の少年のうち、1人が少年の性的犯罪の被害者となりトラウマを抱える。その後時代は「今」に。3人のうち1人は刑事となって町に着任。もう1人は同じ町で元ヤンの商店主。ある日この商店主の娘が殺されたところから3人の人生がふたたび絡み合うようになる。元ヤンは犯人と思しき、トラウマの男に死の制裁を加える。刑事が真犯人とした男は・・・

聞き所:
特にありません。

訛り:
さほどボストン訛りに注意が払われているとは思えません。

私の評価:
エンタメ度   つまらない★★★ 面白い
文化理解要求度 高い   ★★ 低い  
熟語、俗語量  多い   ★ 少ない 
早口度     早い   ★★ 普通
ビジネス用例  少ない  多い 
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合計           8★(満点15★)


台本総語数:12.7k (平均の3割増し)

スピード:184 words/min   数字上はかなり速いが、映画では普通のスピード (前提:会話部分69分として。目安としてお考え下さい)

ストーリー展開:少し込み入っています

難解語割合:200/12.7k=1.57%    「難語」の割合は高いです。

コメント:
明日改めてコメントします。

予告編:(この映画のMT(movie trailer)を見ることができます)
あまり本作の良さを伝えているtrailerとは思えません。

dialogだけのscriptです。

単語解説は明後日に。

大人の勉強でどのくらいの期間をかけるべきか、は大事な問題です。このブログが想定している読者は、ある程度の英語力がある人で、聴き取り力を伸ばしたいと思っている人ですが、その期間として、何度か書いているはずですが、私としては3か月から6か月を想定しています。それ以上の時間をかけても無駄だと思います。開始時の「英語力」によりそれが3か月なのか6か月なのかが決まると思います。ダラダラと時間をかけても、成果が得られないかも知れません。その場合は諦めて別の勉強をすべきです。(ただ、英語圏で生活をしない場合、一度付けた力であってもなんらかの努力をしないと落ちて行くはずです。維持するための努力も必要でしょうね。)無闇に長い時間をかけるというのは語学の場合あまり賢明なことだとは思えません。

----こんなことを書いたのは、私の友人でこのブログを読む人がいて、たまに個人あてに連絡をくれますが、最近の質問で、なぜこんなにたくさんの話題を書くのか、他のブログのようにもっと短く、週に1,2回更新すれば十分ではないか、というコメントでした。3か月から6か月で卒業する人々に、少しでも私の失敗、うまく行った経験、英語ってこんなに面白いんだ、とか、英語ってすごく変な言葉だよね、と感じていただくためには、このような、やや長めのpostを毎日書くことにしています。3日分をまとめて一度に読んでも結構です。ですが、それはこのブログで想定している使いかたとは違います。語学は毎日続けることが極めて大事な学問です。たまにやるだけでは意味がありませんし、毎日10時間やってもそんなに伸びないと思います。このブログは、いわば、中長距離レースでのペースメーカーのようなものでもあります。あなたが「こいつ、変なこと言ってるよな」とか「そんなこと知らなかった」と気づきながら走っていただくために、色々な話題をあなたに発信しているのです。たまに、あなたの関心を引く映画が紹介されているかも知れません。「それだったら今度DVDを借りてみるか」と思っていただければそれが新しい一歩です。そんな挑戦を応援しております。頑張れ、若者。

さて、本日の話題はOBGYNです。発音は/òubìːdʒìːwaién/です(goo辞書からコピー)そのままアルファベットで表記したのと同じですね。別の辞書M-Wでは/oubíːdʒin/(私がアメリカ式の記号をIPAに変換しました)。でも、これは例外で、大半の辞書では/òubìːdʒìːwaién/です。実際にアメリカで使われるときもそのままです。ですので、これを何かの頭文字語(initialism)だと思っているアメリカ人も多いです。というか大半がそう思っています。意味は「産婦人科医」です。obsterician 産科医/ὰbstətríʃən/、gynecologist 婦人科医/ɡàinikάlədʒist/ を合体させてつくった単語です。例によって語源ですが、obsterician、初出は1793年という意外に遅い時代で、ラテン語のobstetriciaに由来し、それはobstetricusの仲間だということです。出産を意味します。gynの方は1847年で、フランス語gynécologieに由来し、これはギリシャ語gynaikoをLatinizeしたものだそうです。gene technologyなどのgeneと同じで、「生む」を意味します。(蛇足ですが、gwen-という語幹をつかって解説している辞書もありますのでご参考にと思いわざわざここで蛇足します。このGwenは女性の名前でもあります。これの出身ははっきりしていてWelshの名前です。ゲール語でwhite、holyを意味するのだそうです。あなたがGwenという名前の女性に合ったら、それはほぼWelsh系統の血筋でしょう。)

いずれかの辞書でmid-wiferyという言葉を使っているものがありました。midwifeの意味は「産婆」(さんば)です。産婆という職業は消滅したのでしょうね。これの語源も少し面白いです。midがmiddleだとしか思わないここで終わりですが、midをmitと読み替えると、wifeと一緒にいるという意味かも、つまりドイツ語の前置詞mitとそれは同じ言葉由来かも、ということを想像できます。ここにも英語がゲルマン諸語由来の言葉だという名残がありますね。

今日の話題からどのような意味を引き出すか、ですが、頭文字で作った言葉の由来を知らずに使っているアメリカ人はかなり多い、ということでしょう。つまり、英語は医学用語ではわざわざ難しい言葉を輸入して、あるいは造語して使っている、素人に威圧的に響くようにわざわざしているということです。

さて、蛇足です。私の友人の奥様は皮膚科の開業医です。「私はdermatologistです」と言われて、私は「?」。彼女は言い直してくれて、skin doctor。なぜ初めから・・・と心の中ではブツブツと。さて、色鉛筆で、被覆材をスルスルとむいて柔らかい芯を出すタイプのものをダーマトグラフィと呼ぶのはご存知?英語ではdermatographyと言います。これ、この芯の外側の紙のようなものを皮膚に見立ててそう名付けたのかな、と思って調べたら、むかし手術のときに、dermatographyで皮膚に直接書き込んで切開箇所などを示すために使ったのだそうです。まあ、現代的な目で見るとあまり衛生的なやり方ではないように見えます。今では病院ではおそらく、dermatographyを使うよりは、marker penの方が多そうです。

日本語はピッチアクセントpitch accentと呼ばれる発音をします。これは日本語の場合、音程の高低を使って、「アクセント」を表すことを言います。反対に英語はstress accentを使う言語の一つです。

2000年前後辺りからでしょうか、日本語で語尾を上げる発音がはやり始めました。今は慣れたのか、それとも廃れたのか、あまり誰も話題にしなくなりました。まったく日本語って変な「はやりすたり」があるなあ、と思っていました。友人の一人にそんな話をしていたら、「同じことがLAにもあったよ」って教えてくれました。その衝撃は私にはすごかったです。

彼が言うには、LAの若い女性が使い始めたらしいのです。それには名前がついていてuptalk、upspeakと言います。意味は語尾を上げて発音する、です。もともと英語にも疑問文があって語尾の音程を上げますよね。でもそうではなくて、平叙文で語尾を上げるのです。でも話者には質問をするつもりはないのです。今調べたら、オーストラリアでも似た現象があるようです。

なぜそうなったのかには諸説あって、北欧の言葉の影響だという説、外国人がもともと多いので、ちゃんと伝わっているかどうか気にしながら言うのでそうなった、という説などなど。他にもありましたが、まあ、どれも決定的なものはなかったので羅列する意味はあまりないと思います。日本語のuptalkでも原因探しが行われましたが、真犯人特定には至らなかったと思います。

なお、言葉以外でも、アメリカでLAの若い女性は常に注目の的です。はやりの食べ物、アプリ、化粧、ライフスタイルなどなど。言葉に壁のないUK、オーストラリアなどのCommonwealthなどからも常に注目されています。彼らには名前があって、valley girlsと呼ばれます。南カリフォルニアにあるサン・フェルナンド・ヴァレーに住むgirlsという意味です。これも比較的最近の造語だそうです。そしてvalley girlsが注目しているのは日本のteenagersだそうです。まあ、オジサン⤴達には⤴関係⤴ありませんけどね⤴で、もしかしたら、ですけど、日本語のuptalkってLAの影響⤴ですか⤴。

lemmaという言葉ご存知でしょうか。いくつかの意味を持ちます。我々に最も身近な意味は、「(辞書の)見出し語」という意味です。まるで英語臭くありません。1560年に、数学で、ギリシャ語lammaから借用とのことです(etymonlineより)。これはおそらく数学上の意味の場合のことでしょうね。ただ、これがどのようにして数学の意味から、英語学、農学(植物のあるパーツを指す)で使う意味が発生したのかは私が調べた範囲では書かれていませんでした。見出し語の他の英語はdictionary wordでしょうか。canonical wordとも言います。

たとえば、miceという言葉の意味を知りたいとします。辞書を見ても出ていないはず(えー、出てますけどね)。その場合には、mouseという単数形だと載っています。このような場合があるとして、そのとき、mouseはlemmaである、と言います。載っていないとすると、miceはnon-lemmaである、と言います。

先日取り上げた、dunnoというような、発音に忠実にすることで独特の雰囲気を出そうという場合には、非正規の方法を使う人がいます。このdunnoのような言葉は、non-lemmaである、と英語では言います。これの仲間はwhodunnitでしょうか。「犯人は誰だ」つまり犯人捜しの小説類を指します。この単語は最初NYCの、たしか新聞コラムニストが使い始めました。20世紀初頭です。当時ですら山のようにたくさんの造語が登場する英語。これもそれと同じで1年もしたら、誰も覚えてないさ、という評論家の声をよそに、この言葉は定着しました。これの仲間の単語も登場して場所を問題にする場合はwheredunnit、やり方を問題にする場合はhowdunnitなどが登場しました。ですが、普通推理小説などでは誰が、が中心になりますので、やはりwhodunnitが金ぴかですね。ですが、定着したためにその綴りで辞書に掲載されております。

この仲間のような単語として私が思い浮かぶのは、whatchamacallit、誰かさん、誰それさん、ですね。what you may call itがcontractされたものですね。これも広く使われますので、lemmaになっています。

あなたが友達に、日本語だと「〇〇の単語を辞書で見るには何という単語で調べるか知っている?」という聞きたい時。lemmaを知っているとWhat is lemma of xyz?とすれば良いのですね。ですが、私の実感として、あまり英語っぽくないこの単語を知らない人もいるはず。大学生同士で尋ねる場合には問題ないと思います。ですので、dictionary word、dictionary spellingという言葉も使えるようにしましょう。発音は「レンマ」ではありません。/lémə/です。 発音で似た別の例。symmetryは日本語に入ってきていて、「シンメトリー」という人が多いです。英語環境では/símətri/と発音しないと通じないと思います。

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