今日は、取り留めのない、言葉の散歩にお付き合いくださいませ。今日は北太平洋方面です。
綴りと発音は、教養の鏡のようなものだと私は考えております。過度に神経質になる必要はありませんが、高い教養の方には、より高度な綴り字の知識がふさわしいです。さらに言えば、高度な綴りの知識にはそれにふさわしい発音があるはずだと私は考えます。日本では、名前に使える漢字の制限がありますが、読み方は「自由」なのだとか。このためにおよそ字とは関係ない音の名前の多いこと。これって本当に良いことなのでしょうかねえ。
さて、ロシア極東地区にある巨大なカムチャツカ半島。これをNHKなどはカムチャッカと発音します。 カムチャツカなのか、カムチャッカなのか。どちらでしょうか。答えはカムチャツカです。ラテン・アルファベットではKamchatkaと綴ります。(キリル文字ではКамчаткаと綴ります。)このラテン・アルファベットはキリル文字を置き換えただけです。より正確には、カムチャートカのようです。トの発音には子音〔t〕だけで、〔o〕は入りません。
ちなみにこの半島には富士山のような美しい山(通称カムチャツカ冨士)があります。標高4800m以上あります。地震の巣の上に位置しております。この列島をアリューシャンといいますが、これは英語です。Aleutianと綴ります。Aleut族と呼ばれる人々がいて、話す言葉がAleut語です。Eskimo-Aleutと呼ばれる語族があるそうで、そのうちの一方を指すようです。Eskimoとここで呼ぶ人々とInuitとの関係などについては、私はまったくの無知です。もうしわけありません。あくまでも、英語という切り口で、ユーラシアの東の果ての地名について述べているに過ぎません。ロシア国内の自治領です。
Eskimo-Aleut語族が言語学者以外の人々に注目されるようになった理由は、ある言語学者がこの語族には、100以上の雪を表す言葉がある、と報告したときからです。普通言語学者しか注目しないことのはずですよね。英語にはsnowだけ。強いていえば、blizzard(猛吹雪)という言葉がある程度。100という単語の多さに、アングロ・サクソンがすぐさま反応しました。自分達の言語が非常に単語数が多い、という悩みあるいは誇りを日頃持っていましたので、自分達をしのぐ言語が発見されたのか、という興味でした。その後あまり聞きません。たぶんこの言語学者を、あるいは発見を茶化してsnowcloneなる公式まで考え出されたようです。
日本語では、米、稲、苗、籾などの言葉があります。言語学的な経験則では、関連単語の多い語はその言語において重要な単語です。
ちなみにblizzardという言葉ですが、ある辞典によると、これは1820年頃にアメリカン・イングリッシュで登場しました。面白いのは、アメリカのMidland地方と呼ばれるところで使われ始めたらしいことです。カナダ以北のblizzardのある地域ではないらしい、というところが興味深いです。OEDによるとblizz(強風の音)に由来する擬声語だろうということです。まあ、語源がわからない単語があるのは仕方ありませんよね。
明日はOEDの使い方の一例です。