今日は予定を変更して、名前に由来する言葉についてです。
先日、国内線飛行機に乗りました。日本の大手の航空会社です。機内アナウンスが英語に代わったとき、その若い、おそらく平成生まれ、の女性の声を聞いて、もしかして日本人の若者は相変わらず、何かが足りないのだろうなあ、と思いました。映画の英語を聞く耳を育てるとかなり改善するはずです。一緒にがんばって行きましょう。
さて、本日は、名前由来の言葉について、です。日本語にもなっているリンチ、和訳は私刑です。私的制裁とも言われます。正式な法的手続きによらない刑罰(おそらく縛り首による極刑)を指します。由来には諸説あるようですが、一つには、アメリカ独立戦争のときの南軍の軍人William Lynchに由来する、というものがあります。従って、リンチの英語のつづりはその名前と同じで、Lを小文字にするだけです。
これと同じくらい有名なのが、ボイコット。組織的な不買、抗議運動のことです。これも人名由来です。19世紀末頃のアイルランドでのCharles Boycottの名に由来します。ですが、現在では大抵はembargoという言葉が意図的に使われます。こちらはスペイン語由来とのことです。中にbar禁止するという言葉がありますね。embargoは主に国家間のboycottを指しますが、現在ではより広く抗議運動として取引をしない、村八分にすることをembargoと表現することが多いと思います。boycottに特にネガティヴなものがあるわけではないと私は了解しております。
chauvinismとは熱狂的愛国主義者のことですが、これはナポレオン軍の兵卒Nicolas Chauvinに由来します。これを熱狂的ととるか、偏狂的ととるかは立場によると思います。身近な人に使うときには少し配慮を必要とするでしょう。ショーヴィニズムと発音します。
亜鉛メッキをすることをgalvanizeと言います。これはLuigi Galvaniというイタリアの生理学者に由来します。彼は生物の神経経路で電気的信号が流れることを発見しました。メッキするときに、弱電流を流して行いますが、それをgalvanizeとフランス語で言い始め、それが英語にも輸入されました。
サンドイッチsandwitchはあまりにも有名ですね。似たもの言葉で、cardiganもまたイングランド貴族の名前に由来します。
人名由来ではないと思いますが、assassinというのは暗殺者のことで、assassination暗殺も同じ系統の言葉です。(人名由来という説あり。)これは十字軍の戦いの頃イスラム世界からの刺客を指すアラビア語に由来するという説がありますが、真偽のほどは知りません。
a la Rossiniロッシーニ風、とは色々な料理に使われる修飾語のようなものです。最も有名なものは、フィレステーキにトリュフとフォアグラをあしらったものです。他にデザート類でもロッシーニ風と名づけれらたものがありますね。これは有名なオペラ作曲家ジョアッキモ・ロッシーニ(イタリア人)に由来します。彼は作曲家として名を成したあと30歳代で引退し、パリで美食生活に浸りました。ロッシーニ風に、明確な意味はあまりなく、贅を極めた、という意味だと私は解釈しております。なお、彼は病気の博物館を自認してました。子宮がん以外は全部やった、というジョークが残っていますので、乳がんにかかったことがあるかも知れません。以前サッカー選手にもロッシーニがいましたね。
パーティのときにこんなトリヴィアを話すと、『それ以外にこんな言葉もあるよ』という具合に話が発展して行くかも知れません。さて、これらのトリヴィアは実は二つの単語を紹介するためでもあります。その一つ目は:nomenclature 命名法と訳されます。語源としてはnomen=name, clare=callと示されている辞書がありました。これを覚えておいて損はありません。普通の人はほとんど使いませんが。もうひとつは、eponymyという言葉です。oにアクセントがあります。これはそのままギリシャ語から借用した言葉で、姓(受け継がれる名前)を意味します。これはeponymから作られた言葉で上に述べた例すべてがeponymです。本当にヨーロッパの言語は何でもかんでも飲み込んで成長して行くのですね。
明日は、映画『ペリカン文書』の後編です。